新学期と新入生と
1日違うだけなのに、3月31日と4月1日はまるで違う季節だ。
今年は4月1日の方が寒くて、オーバーが手放せなかった。
小雨もふっていたし、風もあった。
ところが、どうしたことか。
31日から1日に日付が変わり、朝になると4月になっていて、
町は卒業生のためではなく、新入生の為の装いに変わっていた。
ずるずるっと新年度になだれ込む私には、この卒業と入学、入社みたいな節目はちょっと羨ましくもある。
それを街全体から受け取って、味わせてもらった週末は得した気分だ。
その新しい日に「息の跡」という映画を観に行った。
映画を見る習慣が私にはあまりないので、説明もよっぽど下手ではあるが、
機会があればぜひ観て、沸き上がるものを味わって欲しい作品だ。
登場する佐藤貞一さんの舞台俳優のような語り。
小森はるか監督との素朴で軽妙なやりとり。
初日挨拶の最後、佐藤さんから小森監督への少し長めのお手紙のようなものが読み上げられた。
泣きそうだった。
ふたりのやり取りを見せてもらった後だったから特に。
見終えて、思ったことは言葉で言おうとすると表現できることがとても少ない。
受け取ったものはもっと色々あるのに。
愛すべきお豆さん(佐藤さんが映画の中で小森監督をこう呼ぶ)、ありがとう。
お豆さんのフィルターを通した世界、それをカタチにして見せてくれてありがとうという気持ち。
佐藤さんの気持ちの片鱗を見せてくれてありがとう。
純粋に、混じり気なく、丁寧に、気を配りながらカタチを作り上げる姿勢とその手つきに感謝。
ある意味、とても個人的なものを繊細な気配りで普遍的な何かにして見せてくれる、気付かせてくれる。
昨年、『波のした、土のうえ』の展覧会でもこの世界を見せてくれてありがたい、と思った。
きっとこの二人の作品は全国どこかで出会えると思うので、近くでみられる機会があれば迷わずみた方が良い、と私はおススメしておきたい。