暮らしと芸術と自然
水無月となり、湿気の多いどんよりした季節はちょっぴり憂鬱にも感じるが、
実はなかなか魅力的な時期でもある。
まず、夏至が近い。
つまり、一年で昼の時間が長く感じられる日々がこの頃だ。
雨降りでない日は、心地よい陽射しが注ぐし、
緑に揃った木々や水が馴染んだ頃の田んぼが鏡になって倍に空気を感じる。
少し肌寒い、風の強い日に、展覧会の会期駆け込み最終日に会津若松の県立博物館に出掛けた。
お目当ては「自然をうつす 漆芸家・関谷浩二が挑んだ漆表現の可能性」である。
恥ずかしながら、こんな表現をする方が福島県にいるとはこれまで知らないでいた。
会場には関谷氏の言葉が大きく引き延ばされて作品たちの後ろに展示してあった。
漆で表現された自然のものたちは、普段見ている色使いとはまるで異なっている。
それは、作り手が組み合わせたいわば人工の色でもある。
が、しかし、その色使い、現実にはない漆の道具にうつしとられた世界は、
自然の美しさを凝縮してあらわしていた。
涙が出た。
ちょうど盛りで、道中多く目にしたヤマボウシはいくつかの作品のモチーフとなり、
とても美しかった。
そとの自然の美に心うたれ、奪われ、それをまさに”うつす”ように作品にする作り手の姿、
その心に触れたような心地がした。
うつろう自然の姿、それを尊び、畏れ、すくいとろうとする人間のこころ。
渾然一体となった世界観のなかに入ってみることが出来た休日の時である。